働き方改革時代の外勤営業職の労働時間管理

セミナーやコンサルの現場でよく質問を戴くのは「外勤営業職」の労働時間管理です。

外勤営業職は営業手当などの”定額の残業手当のようなもの”を支払っている会社が圧倒的に多いものです。労働法的には「外勤営業職には残業代が要らない」というのは都市伝説です。裁判等では全く勝ち目はありません。営業職も残業をしたら残業代はいるのです。問題はその管理と払い方です。

外勤営業職もITツールがこれだけ発達してきたので、時間管理ができるという理屈も一部にはあります。しかし、労務の現場ではそうは思いません。工場などではやったらやった分、1分単位で残業代が支払われるのは妥当ですが、外勤営業職は結構、休憩も自由にとっていますし、喫茶店で漫画を読んだり、居眠りをしていたり、さぼっている人、よく見ますよね。

マイペースながらもしっかりと仕事をしている営業マンがほとんどだと思いますが、外でどのように仕事をしているか明らかではないのに、1分単位で残業を払うというのはどうもおかしいと感じてしまうのです。だからといって、このご時世に一定の営業手当のみを払って、夜の9時、10時まで残業をさせている状態は通用しません。

製販一体の会社の場合を考えてみます。毎日、夜の8時、9時まで残るのが常態化しているとします。製造も行っていると始業は8時30分、終業は17時30分という会社が多いです。

このような場合、営業職はたとえば「19時には帰る」という目標をつくります。ということは1日1時間30分は残業です。ですから、おおむね1時間半×20日=30時間分の定額残業代をつけておきます。営業職に定時前に残業申請制というのはなかなか馴染みにくいので、19時を過ぎる場合は事前に上司に許可を得るようにします。結果として、月間30時間を超過したら超過分を払うという管理になります。

「定義できないものは、管理できない。管理できないものは測定できない。測定できないものは改善できない」というのはデミング博士の名言です。

ポイントは定時に帰るというのは現実的ではないけれど、外勤と内勤の組み合わせで、「19時には帰る」という目標意識を持たせ、その定義をどう守るか議論することです。「直行・直帰」を積極的に推奨すれば、顧客への、又は顧客からの移動時間は通勤になりますので、さらに時短が実現します。

若い人に営業職はすこぶる不人気です。ブラックの要素があると、採用できませんし、有能な人材が定着もしません。しかし、若い人が定着しない会社に未来はありません。

上記のようなセンスの労務政策を実行しようとすると、40歳~50歳過ぎのオジサン管理職から、「それでは顧客対応に支障がでる」「失注する」「契約をきられる」「業界的に難しい」など反論が出ることがあります。説明してもこの時代の風を感じとれず、変化を拒み、改善工夫をしようともしない営業のトップは直ちに降ろべきです。

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