「45歳選択定年制」というものを導入しているところがあります。そんなことはできるのでしょうか?

選択定年制というのは別名「早期退職優遇制度」といわれています。

選択定年制というのは業績の悪化に関係なく、年代間の人員バランスの均衡を図る目的などで継続的に早期退職する社員を人員数の限定なく随時募集し、応募者に割増の退職金を払ったり、転職先を紹介したりする制度のことです。一昔前までは、「55歳くらいで役職定年」ということでしたが、昨今のソフト化・サービス化・IT化で熟練を要しない仕事・変化の激しい仕事が増えてきたことから、業種によっては40歳、45歳といった事例もみられます。

金融機関などはドラマ「半沢直樹」で有名になった「関連会社や取引先への出向」という、”実質早期退職制度”でうまく組織の新陳代謝を図っているのはご存じのとおりです。

中小企業の選択定年制度の設計例は以下のようなイメージです。

① 勤続10年以上で45歳以上57歳以下

②退職時に給与6ヵ月分を支給する

③退職金は会社都合

④再就職支援を出来る限り行う

選択定年制度は希望退職制度と混同されて、リストラととられてしまうことがあります。しかし、このシステムは人生プランの選択に幅を持たせる制度です。

制度設計のポイントはセーフティーネットをどうつくるか、です。

40歳ともなれば、食べさせていく家族がいるのが一般的です。その際に挑戦・転進という意欲を支えるのは、きれいごとではなく、まずもって「お金」と「次の就職先」です。それを出来る限りそれをバックアップします。

会計の世界では資産除去債務というのがあり、たとえば、店舗を出したらその店舗の撤退コストも合理的に見積もって取得原価に含め、負債に計上し、期間で費用案分していくという制度があります。つまり、出口を常に意識し、その出口で当然要するコストを見積もっておくという制度です。

労務に置き換えるなら、「退職金(退職給付引当金)」というのは資産除去債務といえるのでないか。退職金は老後の生活保障や賃金後払いなど諸説ありますが、私は撤退コスト、つまり、進路を変更する際、社員をバックアップするコストと考える。どうしてもお辞め戴きたい社員さんがいたらそれは”手切れ金”として機能しうる。一方、永年、定年まで幹部として貢献してくれた社員にはまさに功労金と振り替わります。だから、退職金原資をイザというときのために、しっかり貯めておく必要があるのです。

スクラップ&ビルドが激しい経営環境ではこのような店舗の出店・撤退が絶え間なく続くように、人や組織のスクラップ&ビルドも起こり得るのが常です。

企業の雇用が原則65歳まで義務付けられたこと、高齢化のスピードを考えると早晩68歳~70歳までの雇用が義務付けられるでしょう。その一方で日本は普通に会社に勤務すれば解雇されない国です。だからといって、会社にとっても本人にとっても不本意な思いを抱きながら長くなった職業人生を送る必要はありません。

そこで選択定年制は一つの節目になります。もちろん、会社での勤務を継続するか否かの決定は社員さんが行います。このためには社員さんが40歳~45歳で自分がどのようになっていたいのかについて、20代、30代で自らのキャリアプランを考えてもらう必要があります。

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